Flower:遠い昔のお話


青いあおい新緑、森の中白いしろい詩を唄う少女がいました。
少女は小さな花を摘まんで弄んで、こう云うのです。

「花に囚われないで」

それは遠いとおい昔のおとぎ話・・・



side.El

色とりどりの花が咲きみだれた、小さな国に僕とエリスはたどり着いた。
「ここはフィリア!花の国!ようこそ、旅人さん!」
と、白いワンピースに花を飾った格好の明るい子が僕たちを迎えてくれた。


「私はミリア。あなたの名前は?」
「エリス」と僕は彼女を指さすと
「君の名前・・・は・・・あれ、 ちょ無視?無視かな!?」
エリスは何かいいたげに僕を横目で見ていたけど、僕はミリアに名前を告げなかった。
「・・・まあいいや、エリスね、ようこそフィリアへ!! 」


国の中を案内してもらって、一息ついたとき、
「そうだ、あなたの花を見てあげる」
「花?」僕は思わず興味本位で聞き返してしまった。
「うん。ここには古来から全てのものには、
それぞれ特別な花が宿るという言い伝えの絵本があるの
そして、花を咲かせる事がこの世界に生きる私たちの運命なんだって」
「わたし、やってみたいなぁ・・・」エリスがぽそりとつぶやいた。
「じゃあエリスの花を見てあげるね」
花は白い紙に自分の血で自分の名前を書いて見るのだけど・・・」
エリスは僕を見て様子をうかがっている
彼女は文字が書けない・・・

だから僕は代わりにエリスの名前を白い紙に刻んだ。
「君、優しいね?」ミリアがにやにやしてこっちを見る
しばらくすると、紙に書いたエリスの名前が消えて、一輪の白い花が描かれた。
そして小さな花の蕾がその紙の上にぽつんとあった。

「白い、花ね。初めて見た・・・エリスにピッタリね!どうぞ。
・・・この花は、エリスのこれから生きて、そして死んでいくまでの花。」
形式ばった言葉を話すミリア、これが花を見るときの正式なやり方なのだろう。
「ミリアさん、ありがとう花、大事にするね」

「・・・エリスがこの花を咲かせることができるようにお祈りするね」
ミリアは穏やかに笑った
僕はその顔を今でも忘れることが・・・



side.A

白いしろい花の楽園
其処に寝転ぶ一人の少女。
「エリス、エリスどうしたの。
わぁ白いお花、きれいねエリスにぴったりね」
森の精霊達は彼女の髪に花を絡ませてにこにこしています。
「・・・どうしたの」
「この花を初めて見て触ったのに、何か忘れているような・・・不思議な気持ちになる」
「・・・思い出、かな?」
「わからない」
「セタが戻ってくるから・・・花、摘んでおこうかな」

しばらくして、セタが息を切らして戻ってきました。
「お待たせエリス、じゃあ、行こうか」
「・・・・・・」
「どうしたの」
「・・・セタにあげる」 「・・・ありがとう。じゃあエリスにも、」
と彼は青い花をくれたのです。
深い青色の小さな花。


そのとき、彼の顔を見ることが出来なかったけど、彼はきっと微笑んでいて
とても懐かしい気持ちになれた気がした。



side.RE

「リシアには赤が似合うね深い深紅の髪、僕は好きだよ。」
「・・・!!」
「でも君は赤が嫌い。でしょう?」
「昔の自分を思い出してしまいそうで・・・怖いのです」
「そうだ、おいで?」
あの子は私に花をくれた人。小さなあの花を・・・見つけてくれた人。
「これ、リシアに似合うと思って、摘んできたんだ。」
主は私の髪に緋色の花を絡めて、にっこりと笑った。
「あああありがとうございますっ 一生大事にします!」
「・・・花に一生は無いよ、咲くためだけに存在して、
いつかは綻び散っていく。永遠なんてないんだよ」
「そうですね・・・でも、押し花にして大切にします」
「あの子も花と同じだった」
「そうですね」
そしてまた、繰り返す。永遠に

だって彼女は、辿ることしか出来もの。







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